んで

夕方、銀座の資生堂ギャラリーで開催している1970年生まれのアーティスト、ローラ・オーエンズ:Laura Owens個展(〜3/27sun)に行った。手短に感想をいうと「かなり好き」。
たとえば中国南宋の禅画がオリジナルの「テナガザル」意匠や、インドの細密画の植物パターン、近世〜近代日本画のトリミングなど東洋美術史からの強引ともいえる引用は、アニメ、コミックやテレビなどの商業美術キャラクター・モチーフ、そしてフランス近代美術やアメリカの抽象表現主義、20世紀西洋美術などの歴史的アーカイブにトレースされる希薄な半透明レイヤー状態となって、幾重にもゆらめきながら、繊細な感覚で制御された蜃気楼のような淡い色彩・画像となって吐き出されている。タンタンと目に見えない物語を意識しつつ丁寧に絵の具をペタペタ置いていく感じが面白い。

Untitled :1999

牧谿 :観音猿鶴図(部分・南宋時代)
これ、思うに1990年代前半、NYのアングラ世界でソニック・ユースがやっていたこと(東洋的な旋律や間、マドンナなどのメジャー商業音楽などのイコンを引用した、ヘヴィーなノイズ系ロックのメロディアスな実験)が、めちゃカッコよかったっていう世代的なトラウマにも似た美意識を、美術&絵画の世界に引用した感じっつーんですか? んで、オイラ的にはコンテンポラリーなアートの世界からトキメキが失われて久しいのですが、そんな閉塞感を共有しながら突破する起爆剤は、もしかしたら作品に対する作者の「新鮮な客観性」という、めちゃくちゃ単純な話に還元できたりして。そしてローラ・オーエンの絵画作品には、どこかその「アマチュアっぽい部分とプロっぽい客観性の絶妙なバランス」を感じました。

Untitled :2003
別の視点から考えると彼女の絵画作品に対する市場の評価には1980年代のニュー・ペインティング・ブーム・リバイバル的な微妙な匂いもするんですが、ロバート・ロンゴやジュリアン・シュナーベル、ディヴィッド・サーレなどアメリカ出身「ニュー・ペインティング」作家達が、軒並み平凡&アイタ・タ・タな映画監督となっていった過去は見習わなくてもいいから(と、これは余計な一言)。
資生堂ギャラリーhttp://www.shiseido.co.jp/gallery/current/html/
参考:http://www.crownpoint.com/artists/owens/about_artist.html