時間って、何? 

という子供の頃の質問に納得のいく回答を得たのは学生時代、精神医学者・木村敏氏の『時間と自己』(中公新書・1982年)を読んだ時だった。すなわち「時間とは私である」と。
木村敏氏によると、時間は大きく以下の三つに分類できる。

お祭りの前・・・お祭りを準備している、ワクワクするような状態
お祭りの最中・・・祝祭の中、熱狂的になり、時間と自己が一体化した混沌とした状態
お祭りの後・・・すべてが終わった後の、虚無的な感じがする状態

そして、それぞれ、分裂病者は「アンテ・フェストゥム=祭の前」的であり、常に未来の祭を先取りするような精神状態。
欝病者は「ポスト・フェストゥム=後の祭り」的に、すべてが終わってしまった後のような過去意識において捉える精神状態。
そして、てんかん患者の時間の流れを現在の瞬間瞬間に「イントラ・フェストゥム(祝祭の最中)」的に存在する、意識や言語以前に、精神と肉体が分離する以前の状態で熱狂する感覚。
というような精神病理の分類をしていた。
また、これとは別に、出来事を過去や未来の出来事と関係付けることができない、断絶された「今」「今」「今」「今」「今」「今」「今」が続くような離人症患者の、非連続に切り取られた「もの」のような時間の感覚についても説明している。