ひとまわりする

HelloTaro2007-03-19

 小学生の頃。いわゆる「テクノデリック」や「ソリッド・ステイト・サヴァイバー」に、市立図書館の視聴覚室にて遭遇し、しまいにはあんまり繰り返して聞くので司書のオネエサンに「公共物独占禁止」を理由に再生を断られた。手持ちの「BGM」やUSカット盤バーゲン品の「Yellow Magic Orchestra」などは、本当にレコードの盤面がすり減るほどリピート再生で回し続けた。
 が、ある日を境に、突然、それらの音を聞くことが苦痛になる。メンバーのソロや別プロジェクト、古い音源を聞くのは問題ないのに、YMOになるとダメだったのだ。
 自分にとって長い年月、Yellow Magic Orchestraの音楽はそういうモノであった。しかし、先日、キリン・ラガービールのコマーシャルをきっかけに(ミーハー!!)、かたっぱしからアルバムを聞き直した。
 さすがに20年ぶりぐらいにちゃんと向き合うと、当時とは全然別のおもしろさを発見する。いやはや、これ、ねぇ。テクノというわかりやすい分類&コピーが一人歩きしたけど、なかなか混沌としたノイズ(頭脳的な要素含む)と低音のバイブレーションと感情的なメロディが三つどもえになった、不思議な音楽だったのですね。
 そして、買ったまま読んでいなかった田中雄二氏による3人へのインタビュー集「Yellow Magic Orchestra」と、おなじく卓上で眠っていた細野晴臣氏の「アンビエント・ドライヴァー」を続けざまに読了。
アンビエント・ドライヴァー THE AMBIENT DRIVER (マーブルブックス)
Yellow Magic Orchestra
「歳をとってくると、若い頃のように闇雲にどこにでも出かけていくことは減り、反対に自分が間違った場所に来てしまったことには敏感になる。年齢とともに出不精になるのは、自分の身を守る上で必然的なことではないだろうか。岸信介という昔の政治家は、かなり長命だった。彼によると、長生きする秘訣は義理を欠くことだという。政治家でもこんなことを言うのは面白い。余計なことをしないと決めれば、人からは頑固だ、つき合いが悪いヤツなどと言われてしまうだろう。『楽しいから来れば?』などといくら誘っても、来ないわけだから。だが、頑固でいいではないか。僕は、落語に出てくる横丁のご隠居のように頑固になりたいと思っている」
(人間の重さと軽さ アンビエント・ドライヴァーより)
 よい意味で深沢七郎を彷彿させるこの独言。
 細野さん、あらためてすごいなぁ。
 そして、なんだか時代もメンバーも音楽も、ひとまわりしたんだな。
 30年近く前にステレオの前にかじりついていた自分と、今の自分が、一つの音楽を前にクルクルとまわりながら、鏡像のように向かい合っているような映像が、心の中にうかんできて、なんだかウキウキ楽しかったり。不思議な気分になるのでした。