もったいないお化け

 囲炉裏を囲んだ食事風景、好き嫌いする子供たち。

 「おら、にんじんきらいじゃ」
 「たまねぎきらいじゃ」
 「だいこんきらいじゃ」

 その夜。
 「もっっっったいなぁあああっぁい」
 と、影となって眠っている子供たちに襲いかかる「もったいないお化け」たち。

 公共広告機構のCMとして1980年代で放映された、まんが日本昔ばなし風アニメCM。続編として、あいさつしない「つんつん娘」やごめんなさいが言えない「ひねくれ小僧」なども作られたが、やはり「もったいないお化け」が最高傑作。

 どれぐらい傑作かというと、このCMの初放映開始直後、まだ幼かった弟は本当に怖がって泣きそうになり、お化けが出てくるタイミングを見計らい電灯を消すと、彼は本当に涙を流して怒った。
 それ以来、弟が好き嫌いして食べ物を残すたびに、市原悦子が廃棄食品の霊に憑依して熱演する 「もっっっったいなぁあああっぁい」の声をマネするのが、弟が小学校に進学する頃まで数年間の食事中の習慣となった。

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 三日前に炊飯器でご飯を炊いたのに、いろいろな事情で外食が続き食べきれなかった。
 先ほどそれを捨てようとした時、 窓の外から
 「もっっっったい〜なぁ〜あああっぁぁぁ〜〜い」
 と、いう声が、雨音に混ざって聞こえた。

 そのCMに本当に洗脳(影響)されていたのは、弟ではなく自分だということを、ぼそぼそとした食感の焼き飯を食べている時に悟った。