おおきいものから、ちいさなものから

HelloTaro2004-12-04


 世界地図が、好きだ。
 幼い頃、映画やアニメなどで世界征服の野望にとりつかれた悪人が、秘密基地で大きな世界地図を背後にしてるのに憧れていた。一人暮らしを始めたとき最初に買ったのはB全版の世界地図。今でもボーっとしている時や電話している最中、よくその地図を眺めている。たぶん、そのイメージが自分の無意識に与えている影響は大きくて、ついつい物事を調べる時に、最初に世界地図の枠組みに引っ張って考えている。最近は各種ホームページやオンライン百科事典などを検索すればたいがいのことは判明するし、その導入部として世界地図はとても役に立つ。情報がある一定量まで集まると、突然、壁に貼られた印刷物が、脳内ドラゴンクエストのスイッチボタンとなり、いろいろなことを語り出す驚きと楽しさ。
 たとえば「コーヒー」をテーマに遊んでみる。まず、アフリカ発祥のコーヒーが、中近東を経て十字軍経由で西洋人に知られるようになった経緯、大航海時代のヨーロッパの喫茶文化とその発展について、次に奴隷制度と南米コーヒー産地プランテーションとの関わり、アメリ独立運動とコーヒー、経済発展とコーヒー消費の比例について、スターバックスとピーツの因縁と両者の国際戦略の違いなど、時空も国境も越えて、どこまでもゲームは複雑に絡まったタペストリーのように続く。次はどこにいこうかな。わくわく。と。
 しかし、上に述べたような、コーヒーの歴史など博物的知識を完璧に語りながら「好きなコーヒーは?」と聞かれて「ブラックかな。家だとインスタント」としか答えられない人より、そんなうんちくを全然知らなくても「家で愛用しているコーヒーはドトール・ハワイ自社農園のマウカメドウズ・ブレンドか、新宿駅東口地下にあるベルクという喫茶店エスプレッソ・ブレンド。節約したい時は成城石井のイタリアンブレンドもお徳用で悪くない。以前はピーツコーヒーのケニアがお気に入りだったけど、去年の春に日本から撤退しちゃったので悲しい」と、即答できる人の方が本当のコーヒー好きに見えない? これ、全部を「コーヒー」以外の言葉と置き換えてもいいけど。たとえば「家族」とか「ジャズ」とか、、、。
 モノゴトの位置や認識に関するマップを作るときは、最初に世界地図のようなおおきな枠組みと立ち位置からカテゴリーや階層を作って全体像を眺めたほうが、より正確で精度のある情報が得られる。
 でも、その時にいちばん大切なのは、そして説得力があるのは、自分自身に関わってくる現実の対象との具体的なかかわり方についてのことば、だったりする。いま、自分が感じられる、手に入れた、口にしている、出会っている、人や物や出来事の具体的な名称や温度にきちんと向き合いつつ、心の中の大きな地図を手放さないで、おおきいものから、ちいさなものへと、ブランコのように移動するバランスの中から自分自身のことばを紡ぐこと。
 なんか、一瞬、思いついた事をメモしようとおもったら長くなってしまった。最初にいいたかったのは、もっと簡単なことだったのに、、、。とほほ。
 画像は17世紀オランダ人画家フェルメールの「青衣の女」部分。世界の海を渡り歩くオランダ商人の妻だろうか? 彼女が熱心に読んでいる手紙の送り主は、たぶん、背後の地図の中を旅している。