Rainy Day Woman
まるで作りっぱなしで放り出された聖地のように、丸い巨大な岩が殺伐とゴロゴロしていた。
おそらく、数百年前までは緑の山脈に広がるジャングルだったのだろう。それが、現在も絶え間なく続く焼き畑と、水田への開拓、森林の木材をつかった建材への転用や焼き煉瓦作りに森は伐採され、森に隠されていた岩岩が地表に露出したらしい。
もちろん、人間の営みに善悪もなく、ただ今となっては、偶然に支配された歴史的な必然性の積み重ねがこのような風景を生んでいる。ただ、これらの岩々が織りなす不思議な風景は、人間を拒絶し対立するものとして屹立しているようだった。
助手席に座らせてもらっていた自分は、運転手に遠慮してなるだけ目を覚ましている努力をしていたが、夕暮れ時、空腹を覚えて昼食のデザートの残りのバナナを食べると、ふわふわと意識はどこか空中に飛んで、とある山の頂上にある大きな岩塊にインタビューしていた。
「はじめまして。いつからストーンしていますか?」と。
岩は、自らが、岩であることを
忘れてしまうほど
岩だったから
自ら、何かを、話しかけることもなく
待っている
何を?
永遠の終わりに
吹く風のことを
聞くこともなく
眠っている
力を
よびさますこともなく
ただ
受け身でありつづけた
この数億年間の営みが
永遠ではなく
必然と偶然が、幾重にも重なって
結晶化したものにすぎないと・・・。(見届けた語り手は部屋の灯りをパチンと消しドアを閉じた)
ふと、気がつくと、目の前は闇につつまれ、遠くに野焼きの炎が赤くゆれていた。
目的地まで、あと3時間。ドライブを続けなくてはならない。
(この項続く)