匂い

HelloTaro2005-01-02


 ときどき、意味もなく、明確な名付けさえした覚えのない「匂い」の記憶に、こころ揺らぐ。発酵する匂い、血の匂い、そして人間の発するの匂い。匂いが気になるのは、嗅覚は説明や理由から一段飛びに、身体の生理反応としてあらわれ、その意味においてもっとも肉体的・直感的であるだからだと思う。
 そして、この散文はいつまでもぶつぶつ続き、いつまでも完成しない。
 なぜならばこれは詩である以前に、ダダダダダッと連射された「ぬけがら感想」であり、個人的な呟きにすぎないから。

 記憶の匂い
 空港の匂い
 港街の匂い
 都市にも村にもそれぞれの匂いがあり
 時差も異国も民族も匂いとして記憶される
 老いにも若さにもそれぞれの匂いがあり
 乳飲み子は甘い匂いを主張する
 ふと風に匂いを感じ
 雨の匂いと混ざった
 土や岩、石の匂いを嗅ぐ
 濡れた草の匂い
 枯れた草の匂い
 湿った熱帯雨林の匂い
 悲しみと欲望の匂いを忘れるために
 酌み交わす酒の種類も匂いである
 紙幣とコインの匂い
 生活とは匂いであり
 キスとは匂いである
 家族や家、それぞれの匂いがあり
 懐かしい匂いがしたり
 匂いを隠したり
 感情的な匂いに包まれたりしながら
 この匂い、なんだっけ?
 市場に残った
 果実が無意味に発酵する匂いを
 トタン屋根の隙間から差す日差しが加速する
 深く闇が香るように
 あらゆる光も匂いとして輝きを放つ
 柔らかい皮膚の芳香に
 血の匂いが混じった
 彼女の匂いと
 私は
 匂いになる
 匂いに
 帰っていく

Helloデジオstupidity:Hell003:空港にて
http://easy.dedio.jp/home/stupidity/media/blog/main/2005/01/radio_02_231355.mp3

デジオの宇宙色々: http://dedio.jp/