救済

HelloTaro2005-07-21

お隣にいた韓国人の一家が引っ越してから彼らはやってきた。
チャバネゴキブリ。小さな、褐色の、すばしっこい奴ら。
いつも通り、自分はホウサン団子を用意して、部屋の要所にばらまいたが、減る気配がない。
例年なら、1週間程度で全滅するか退散してしまうはずなのに・・・。
いや、少々、勢いが弱くなり、全滅も可能かとおもった時もあった。
しかし、空になった隣の部屋の改装工事が始まってから、また数が増えたようだ。
自分は狂ったように、コンバットやらゴキブリ専用グミやらよくわからない駆除の餌など買い集めて仕掛けているが、とにかく減らない。
毒に耐性が出来ているのだろうか?
彼らも、もう戻る場所も無く、背水の陣なのだろう。
まぁ、じゃまとかしなければ、いいのだが、なぜかゴキブリにだけは寛容になれない。
というか、台所ならいいんだよ。貴重な古書などを積んである本棚やハードディスクのある場所をウロウロしているから発狂したくなる。
ゴキブリのクソなんかで、本を汚されてたまるか。ハードディスクの中のデータを壊されてたまるか。
チャバネゴキブリはアフリカ原産といわれているが、野生種が見つかっていないため、正確な発祥の地は見つかっていない。家電製品の中のスペースに潜り込むことで、世界中に広まっていったらしい。
先日、耐えかねて、ついにゴキブリホイホイを使ってしまった。
粘着テープに生きたまま張り付いている様子を想像するのがイヤで、いままで使っていなかったが、最近は彼らを殺すことに関して無感覚になってきた。
ブルーハーツは「リンダリンダ」で「ドブネズミみたいに〜美しくなりたい〜」と叫んだが、これが「チャバネゴキブリみたいに〜美しくなりたい〜」だったら、これほど支持される名曲となっただろうか?
そしてチャバネゴキブリは、なぜこれほど強い生命力と繁殖力をもって、戦いぬいているのだろうか?
先ほど、ゴキブリホイホイの粘着テープに張り付いた彼らを観察していると、まるでライオンのような褐色と茶色の縞々になったヘルメットをかぶったようなルックスで、一定のリズムで首を振って、仲間に演説をしている一匹の大きめのゴキブリがいた。
押入の中にしまっていた、他の生命体の話を聞くための道具「カラス頭巾」をかぶって耳をすますと、彼は仲間に演説していた。
「チャバネファリアンたる我々はいつか聖なる祖国アフリカに戻るため、戦い続けなくては成らない。
我々は土から生まれ土に戻る、無限に増幅する生き神である。
人間は古代に宇宙からきたアメーバーのクローンであり、人類はチャバネゴキブリより劣る。
そしてこの日本という場所の状況は光りなき地獄である。
祖国アフリカは天国。
祖国アフリカの皇帝は、現在国外にいるチャバネゴキブリが故郷に帰還するための準備をされている。
我々の生命は無限に殺され、無限に増幅するだろう。しかし最後に生き残るのは我々だ。
チャバネゴキブリが世界を統治する日は遠くない・・・」
そして、ホウサン団子をひとかけら食べると、あきらかにトリップした顔で白目をむいていた。よく見ると、触覚は複雑に編み込まれたドレッドスタイル。そして、魂をふるわせるような声で、突然歌い出した。
「立ち上がれ、立ち上がれ、人間はもうおしまいだぁ〜立ち上がれ、立ち上がれ、人間はもうおしまいだぁ〜」
自分は「カラス頭巾」を脱ぎ、ガス湯沸かし器を60度の設定にしてスイッチを入れ、熱湯をためた洗い桶に、いまやライブハウスとなっているゴキブリホイホイを1分ほど漬けた後、白いポリ袋に入れゴミ箱に捨てた。
ネットで調べた情報によれば、チャバネゴキブリは低温に弱いから、このまま2〜3ヶ月もガマンして秋になれば、完全に駆除できるだろう。
もうすこしの辛抱だ。戦いはまだしばらく、続く。