プール

更衣室の洗面所にて、久しぶりに鏡に全身を映す。ロクなメンテナンスもされていない、とても醜い自分のからだを直視&認識。オモくヤバイ。このような中年の身体の中に、たとえば幼年期や青春期の記憶が鮮明に入っているということを、そしてその行動の基本は、当時からあまり大きな変化はされていないという事実を、十数年前の自分はキチンと認識することは出来なかった。
この季節、プールに入る時には、慎重に準備体操をする必要がある。特に足を重視して、念入りにストレッチした後に水に身体を沈める。人影もまばらなので、自分のペースでゆっくり泳ぐことにする。ひたすら身をのばして、水の中にある見えない階層、、、温度や水流の層の動き、、、、を感じながら、休まずに40分ほど続けて平泳ぎとドルフィンキック、時々クロールを交えて泳ぎ続ける。
自分のペースで泳ぐという行為は、ある意味、瞑想に近い。
最初は自分の中の身体の筋肉の衰えなどチェックしながら、バランスをとる作業。次になんとなく、さきほど目撃したプールの窓ガラスに影として映っていた人影の群れについて考えたり、日常のこまごました雑事を思い出したりしている。
しかし、やがて、ただボーっと我が身が水の中で、目的もない反復運動の中で、広がっていくのを感じるだけになり、頭でなにも考えなくなる。この痺れたような、拡張感覚が好きで、自分は山にいったりプールで泳いだり、あるいは音楽を聴きにいったりしている。