幻のドングリ

子供の頃、自分が育った所沢周辺のドングリは、食用とかそういうレベルではなかった。
口にいれた瞬間、渋柿と同様の収斂していく苦みが、舌の上にずっと残った。
縄文時代の人が、これを食べるのに、苦労して何度もアク抜きしたと聞いて、本当に大変だったのだろうと想像した。
そう、でも、噂では知っていたのだ。
マテバシイスダジイのことは。
それは、アク抜きしなくても食用になるという、幻のドングリ。
しかし、子供の頃に入手できた資料(学研の子供向け教育マンガとか)では、中部地方から関西よりも南の森林にしかないというような記述があり、常々残念に思いつつ、いつか秋のタイミングに訪問し、採取しようと心に決めていた。
ただ、ただ、アクを抜かずに、直接ナマでドングリを食らいたかったのだ。
もしかすると、何度かそのチャンスはあったはずだ。しかし、忘れちゃっていたのよ、子供の頃の決心だし。