吉田健一

 吉田健一氏「旨いものはうまい」について、すみません。頭があがりません(何から?)。生意気でした。以前「私の食物誌」を読んだ時、自分の精神はあまりにすさんでおり、その魅力が分かりませんでした。猛烈に反省します。
「併し別に、今よりももっと頑丈な胃が欲しいとは思わない。我々は余り慾を出してはならないので、鰻丼の後で親子丼を食べてそれでもどことなく物足りないから、鴨南蛮を一つ頼む程度の胃ならば、それで満足すべきである。尤も、鰻丼一つだけで満足することが出来たら、なほいい訳であるが、その点でも、余り慾張ってはならない。多い方でも、少ない方でも、七分目という所を我々は望みたい」(胃の話)
 などというお方にかなう訳がありません。特に「満腹感」というエッセイは圧巻です。(2004/10/30追記)