尾と頭

小学生6年の時、定年間際ヒステリー婆の担任に当たったことがある。
彼女は、給食の時に、魚や肉など、大きさが微妙にことなるオカズに関して、必ず一番良いものを一番最初に受け取らないと気が済まない人物だった。
ある日、なにかの拍子で給食を配る時間にヒステリー婆が席を外していたため、気をきかせて担当の女の子がその日のオカズの中で一番大きな部位を入れて、食事を準備した。
クラスのみんなが、食事を半分以上食べた時に悲劇は起こった。
戻ってきたヒステリー婆が「あんた達、何を考えているの? 私に配膳したのは誰?」と叫びだしたのだ。
その日のメインのオカズは、サンマの南蛮揚げで、頭と尾の部分で半分に切って分けられていた。
そして、ヒステリー婆の机においてあったその日の給食は、サンマの南蛮揚げの「尾」の部分。
「尾の部分を担任に出すってことは、クラス全員が私を侮辱していることを意味するのよ。あんた達。全員が私を屈辱しているのよ。意味がわかる?」
意味不明の絶叫と発作の後、給食時間の途中で、クラス全員が、それ以上食べる事をやめさせられた。そしてホームルームの名を借りた犯人捜しと、そのオカズを配膳した女の子のつるし上げが始まった。配膳係全員が泣きながら詫びを入れさせられた後、給食時間は終わり、昼休みも残り5分。次の掃除の時間までに時間内に食べきれなかった食事は、すべて強制的に捨てさせられた。
その後、ヒステリー婆は、どーんとよどんだ空気で子供達が掃除のために椅子と机を移動させているのを横目に、まだ怒りさめやらぬ表情で、ゆったりと食事を続けた。