見せ方について

HelloTaro2006-04-10

「高橋(志摩観光ホテル料理長) 私はホテルの料理にいかにお客さまになれていただくかということを考えたとき、物語や伝説をつくり、これおを食べなければだめだという物語性、あこがれを抱かせて、うまさをつくることが先決だと思いますね。
村上(帝国ホテル料理長) 高橋さんの場合は、高橋さんの料理を食べて、いままで出会ったことのない味に出会って、うまいというように、感銘し、驚くお客様がいらして、これだけの評価もうけているのだから・・・・・。
高橋 これは手品の手の内をバラすようですが、私の料理に使われている素材っていうのは、少なくとも日本人のきらいなものを、ひとつも使っていないんです。なにを食べてもうまいということの一つは、きらいなものを使っていないということなんです。
 それから、ふだんの素材を使わないことですね。ホテルがリゾートということも関係していますが、日常にお客様が召し上がっている素材をまず使わない。言いかえれば、一回食べてみたいものだという期待される素材と、キチッと組み立てられた調理技術でつくられた料理であるということが大きな要素だと思うんです。(中略)たとえば、エビは、エビフライはたとえさめていても、食べる側にとっては、うまいというのが平均的ですね(笑)。タイの刺身は、たとえ、それが少しなにしていても、これはタイだと、タイの塩焼きだといえば、日本人の嗜好性からいって、まずいといって食べることはない。絶対うまいといって食べますね。そういうものを、組み合わせて作られた料理なんです。
 そして、あ、キャビアがのっていた、トリュフがはいっていた。あるいは、伊勢エビが豊富にはいっていたと。アワビは、東京ではだいたい四十五グラムぐらいが精一杯だけど(伊勢志摩では)八十グラムぐらいのアワビがつけられる。自分の期待していたものより以上の、もっと大きなものが帰ってきたという料理の見せ方を、私はしているからだと思いますね。」
「料理長」高橋忠之・村上信夫対談(柴田書店・1986年)より。
これ、嵐山光三郎氏も絶賛していた名著。そして、10年ぐらい前に読んだ時も、高橋料理長の自信たっぷりなこのお言葉がよいとおもったけど、あらためて、めっちゃ深いなぁ。しみじみきます。