1933

父の時代・私の時代 わがエディトリアルデザイン史
 絶版を理由に古本屋で4000円近い価格で取引されていた堀内誠一氏の「父の時代・私の時代」が4月にマガシンハウスから再刊されていた。仮フランス装丁仕上げの美しい仕上げに、担当者の思い入れが伝わる一冊。
 アンアンの他、ブルータスやポパイ、エッセなど、天才雑誌デザイナーとしての名声を思うままにした上、国際的に評価される絵本デザイナーとしても知られている堀内氏のルーツについて、淡々と、恥じらうように、いとおしむようにつづった前半の「父の時代」パートが、なんともせつない。
 やはり図案家であった堀内誠一氏の父が1933年に本所向島にたちあげたレインボー・スタジオというデザイン事務所。彼の父は、賞金図案公募に片っ端から当選し、同僚からスゴかったんだぞ、と語り継がれるような人物。その父のルーツは、師匠であった多田北烏氏のモダンなイラストなどの図案にあり、職人と画材の中で知恵を吸収し育っていく堀内少年。世代を超えて綿々と流れる、文化的遺伝子。
 そして、淡々と語られる、堀内誠一氏自身の「私の時代」の、なんという輝き。